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緑内障診療

緑内障とは

緑内障とは、目からの情報を脳に伝える視神経が障害されて見える範囲が狭くなる病気を言います。
原因としては眼圧(目の堅さ)の異常な高さが原因とされてきました。

視神経の正常のものは下の写真のように色がやや赤みを帯びて中央のへこみが少ないものです。

ryoku1

視神経が弱った状態は下の写真のようになります。

ryoku2

色が白く、あえて言えばレモン色、中央のへこみが大きくなっています。

現在のところ眼圧の正常値は20mmHg(水銀柱)が上限とされています。
この数値が適切なものか、あるいは日本における緑内障の分布、病型などを判定するために2000年から全国規模の調査が行われました。

岐阜県の多治見市がサンプル都市として選ばれ、東京大学をはじめとする全国のトップクラスの緑内障研究者に混じって、当院院長も参加して調査を行いました。その結果、日本人では眼圧が正常範囲であるのに緑内障になる、正常眼圧緑内障が最も多いことがわかったのです。
正常な眼圧でなぜ障害が起こるか、ということについては、血流障害、もともと神経が弱い、近視に伴うもの、などいくつかの原因が重なったものと考えられています。
院長はこの結果が出るはるか以前に、原因に基づいた視神経の分類研究を学会にて発表し、さらには論文としても発表しております。

第4回日本緑内障学会 東京 平成5年9月16日ー18日
正常眼圧緑内障の視神経乳頭所見による分類の試み
稲積幸介 山本哲也 北澤克明

正常眼圧緑内障の視神経乳頭所見による細分類
稲積幸介 山本哲也 北澤克明
あたらしい眼科 12(1):135ー136、1995

視野検査について

緑内障は、白内障のようにある程度進行してから手術治療を行えばよいというものではなく、進行した障害は元には戻りません。
また目は二つあり、互いの障害を補い合う性質を持っているため、かなり障害が進むまで自覚できません。
こういったことから、早期発見早期治療の必要性が叫ばれています。

これには視神経の状態の把握、そして視野(見える範囲)の把握が必要です。
従来視野検査は片目で15分ほどの検査時間を必要とし、患者さまにはかなりの苦痛を強いるものでした。
これについても、院長は短い時間でより正確に測定するプログラムに早くから注目し、研究を重ねて来ました。

Dicon TKS4000視野計の使用経験
稲積幸介 山本哲也 北澤克明
あたらしい眼科12(7):1167ー1170、1995

現在標準的に使われているものはSITAといいますが、これについて院長は日本ではじめての研究報告をなし、日本初の論文を日本で最も権威のある日本眼科学会雑誌に発表しました。このプログラムSITAは、当院ではもちろん、多くの大学病院でも標準的に使われるプログラムとなっております。

新しい閾値測定アルゴリズム、Swedish Interactive Thresholding Algorithm(SITA) の緑内障眼における評価
稲積幸介、辻明、山本哲也、北澤克明
日本眼科学会雑誌 102: 667-672, 1998

第51回 日本臨床眼科学会 平成9年10月17日 東京 専門別研究会(視野)
SITAプログラムの臨床的意義ー正常眼にて
辻 明 稲積幸介 岩瀬 愛子 山本哲也 北澤克明)

緑内障の治療について

現在のところ、明らかに効果があると考えられる治療は眼圧を下げることだけとされており、薬、手術、レーザーなど、あらゆる方法を用いて眼圧を下げる方法が検討されています。
治療についても院長は薬物療法や、手術の合併症対策などについて研究を重ねてまいりました。
下の写真は線維柱帯切除術という手術を行った例ですが、眼の中の水(房水)を外に流すようにしてあります。

緑内障治療写真

第11回β遮断剤研究会研究会 東京 平成5年11月20日
最大耐用薬物治療中の緑内障に対するアプラクロニジンの眼圧下降効果
稲積幸介 山本哲也 北澤克明

最大耐用薬物治療中の緑内障に対するアプラクロニジンの相加的眼圧下降効果
稲積幸介 山本哲也 北澤克明
あたらしい眼科 11(11):1767ー1770、1994

緑内障術後の低眼圧黄斑症の対処法について教えてください
稲積幸介
あたらしい眼科 11 特集 緑内障Q&A

第三回 日本緑内障学会 東京 平成4年10月24日ー25日
トリクロロ酢酸による緑内障術後低眼圧黄斑症の治療
稲積幸介 河村充哉 川瀬和秀 山本哲也 北澤克明

急性閉塞隅角緑内障

以上は慢性緑内障のお話なのですが、もうひとつの大きなグループとして急性閉塞隅角緑内障があります。
これは、若いころ目が良く見えた人におこるもので、ある日突然目から頭にかけての痛みを生じ、調べてみると眼圧の急激な上昇を起こしているというものです。視神経の急激なダメージを起こしますので、レーザー、点滴などでの救急治療が必要になります。

通常の隅角は下の写真のように白いライン(角膜)と虹彩の隙間が十分に空いていて、その先にある房水という液を排出する部分、すなわち隅角が十分に空いています。

ryokunai

ところが閉塞隅角では下の写真のように角膜の白いラインと虹彩の茶色いラインの間に隙間がなく、その先の隅角が閉塞することがあるのです。

ryokunai2

院長は、このグループの研究を、世界的な権威者であるニューヨークのRobert Ritch教授の研究室で1998年から2000年まで行っていました。

The Association for Research in Vision and Ophthalmology,
平成11年5月9日ー14日 Fort Lauderdale, USA
Ultrasound Biomicroscopy of Pars Plana Cysts
JC Wang, K Inazumi, H Ishikawa, RC Gentile, JM Liebmann, R Ritch

The Association for Research in Vision and Ophthalmology,
平成11年5月9日ー14日 Fort Lauderdale, USA
Dynamic Iris Movement Analysis Using Ultrasound Biomicroscopy (UBM)
H Ishikawa, K Inazumi, R Gurses-Ozden, JM Liebmann, Y Uji, R Ritch

The Association for Research in Vision and Ophthalmology,
平成11年5月9日ー14日 Fort Lauderdale, USA “Pseudo” Plateau Iris Configuration Caused By Multiple Iridociliary Cysts
K Inazumi, H Ishikawa, R Gurses Ozden, HL Dou, JM Liebmann, R Ritch

このグループの診断は、隅角といって虹彩と角膜の隙間の状態を把握することが大切です。
通常は隅角鏡というレンズを用いて行いますが、より明確に判断するためには、Ultrasound Biomicroscopy (UBM)すなわち超音波生体顕微鏡というものを用いると判断できます。

院長はこの装置を用いた診断にニューヨーク時代、徹底して取り組み、現在では日本緑内障学会の研修委員会の依頼で、日本臨床眼科学会という日本最大の眼科学会で連続して講師を務めています。
治療についてはレーザー治療、水晶体摘出などがあり、患者さまの状態により適切な方法を選択します。

学会発表風景

緑内障は、診断された後は、継続的な診療によって病気が進まないようにすることが大切です。もっとも負担の少ない方法は、目薬となります。

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